第113回判例研究会

月1回の判例研究会の第113回は、2021年12月21日開催され、判例時報2484~2487号から4判例が報告された。1件は、建築請負業者の施主に対する請負代金請求訴訟に対し、施主が瑕疵修補に代わる損害賠償請求の反訴を提起後、反訴請求債権をもって本訴請求に対する相殺をすることができるかに関する事例(最判令和2年9月11日)である。最高裁は、本件のような請負代金と瑕疵修補が対立する事件の場合は弁論の分離が許されず、反訴と相殺とで矛盾する判断が下されるおそれはないから、反訴と相殺は重複起訴禁止の規定に抵触しないとした。本件同様に、反訴や相殺を主張すべきシチュエーションは実務上散見され、研究会でも同種事案について議論された。その他、遺言書の封筒の裏面に「私が●より先に死亡した場合の遺言書」と記載された場合の取り扱いに関する東京地判令和2年7月31日、複数債権がある場合において充当指定なく一部弁済し1本の債権に法定充当されたとき債務承認による時効中断が全債権に及ぶかに関する最判令和2年12月15日、無期転換者向け就業規則を別途用意してある場合において当初からの無期労働者向け従業規則が無期転換者に適用されるかに関する大阪地判令和2年11月25日が紹介された。