第116~117回判例研究会

月1回の判例研究会の第116回は、2022年3月30日開催され、判例時報2494~2497号から4判例が報告された。不登校の高校生に対する、校則に基づく生徒指導はいずれも適法とされたが、名列表からの削除や机・椅子の撤去を行い、大阪府教育庁から指導を受けて取りやめるまで継続したのは違法とされた事例(大阪地判令和3年2月16日)、遺言公正証書作成当時の遺言能力が争われ、第一審で中等度以上のアルツハイマー型認知症であったとして遺言無効が認められたが、控訴審では遺言能力がなかったと疑わせるほどの重度のアルツハイマー型認知症であったと認めるには足りないとして、原判決を取り消した事例(広島高判令和2年9月30日)などが紹介された。

第117回は、判例時報2498~2501号から4判例が報告された。税関検査で職員が英語話者の対象者に対し、「sign, sign it, OK?」と述べて、手荷物解体検査の同意書への署名を求めたところ、対象者が「That’s not OK」と拒否したが、職員は、イギリス英語を正確に聞き取れず、語尾のOKのみ理解して口頭の承諾があったと誤解し、結局、令状を取らずに手荷物をバールで破壊したのは違法であったとされた事例(千葉地判令和2年6月19日)、4月13日に遺言書の全文・日付・氏名を自筆し、5月10日に押印した場合、5月10日に遺言書が完成したことになるため、遺言書記載の4月13日は完成日の記載としては誤りとなるとき、遺言全体が無効になると判断した原判決を取り消し、遺言を有効と判断した事例(最判令和3年1月18日)などが紹介された。