月1回の判例研究会の第150回は、2025年2月25日開催され、判例時報2607~2610号から4判例が報告された。遺言により相続分がないものとされた相続人は遺留分侵害額を請求しても特別寄与料を負担しないとされた事例(最一小決令和5年10月26日)、特殊詐欺の受け子をした少年の詐欺の故意を認めた判断に重大な事実の誤認があるとして取り消された事例(東京高決令和5年9月15日)、弁護士の依頼者に対する報告義務の損害賠償責任が認められた事例(東京地判令和5年5月10日)、父が借入金をもとに収益物件を建築し、子に対し借入金を免責的債務引受することを条件に収益物件を贈与し、子が収益物件の収益をもって借入金を完済した後、父が死亡した場合における、子の特別受益の価額が争われた事例(東京高決令和5年12月7日、原審は単純贈与として相続開始時の収益物件の価額×100%であるとしたが、抗告審は負担付贈与であるとして相続開始時の収益物件の価額×38%であるとした。※(贈与時の収益物件の価額-贈与時の残債務の額)/贈与時の収益物件の価額=38%)が紹介され、議論した。
第151回は、2025年3月25日開催され、判例時報2611~2614号から4判例が報告された。いじめ防止対策推進法の定義する「いじめ」は広範な行為が該当するため、同法の「いじめ」に該当するからといって当然に不法行為に当たらないとして、個々の行為の違法性を吟味した事例(東京地判令和5年10月30日)、民事事件において、職場の休憩室の秘密録音が信義則に反するとして証拠排除されたが、対面で会話した相手の秘密録音は証拠採用された事例(大阪地判令和5年12月7日)、弁護士が控訴審において依頼者の意向を確認しないまま和解の意向がない旨の記載のある照会兼回答書を提出したことが委任契約上の善管注意義務違反に当たるとした事例(大阪高判令和5年5月25日)、判決により養育費支払義務を負う父は、親権者母の虐待により子が一時保護されたときは、養育費減額審判を申し立てると申立日以降の養育費支払義務が取り消されるとされた事例(東京高決令和4年12月15日)が紹介された。