第142~144回判例研究会

月1回の判例研究会の第142回は、2024年6月26日開催され、デジタル証拠についてe-ラーニングを受講した。ウェブページの復元、モザイクアプローチ、カスタマーバーコードなど、盛り沢山の内容であった。

第143回は、2024年7月23日開催され、判例時報2582~2585号から4判例が報告された。
プレサンス事件における文書提出命令に関する大阪地決令和5年9月19日、当番弁護要請の懈怠に関する大阪地判令和4年12月13日、死刑確定者を原告とする本人訴訟における原告の出頭に関する最決令和5年9月27日、高校の自転車部における公道走行中の自損事故で顧問の指導に過失があったとされた京都地判令和5年2月9日が紹介され、議論した。

第144回は、2024年8月29日開催され、判例時報2587~2589、2594号から4判例が報告された。
弁護士会照会に応じて診療録を提出した医療機関が、患者から守秘義務違反の損害賠償請求を受けたが、請求が棄却された事例(東京地判令和4年12月26日)については、照会を受けた団体が不当の損害を被らないためのアドバイスや、望ましい制度設計について議論した。
人傷一括払がなされた場合における被害者の加害者に対する損害賠償請求権の額から控除することができる額に関する事例(最判令和5年10月16日)については、過去の判例研究会で扱った最判令和4年3月24日も併せて、損益相殺の取り扱いについて再確認した。
教諭の小学6年生に対する感情的な指導が違法とされた事例(熊本地判令和5年2月10日)については、学校内での言動の立証困難性などについて議論した。
香川県ネット・ゲーム依存症対策条例の違憲性が争われた事例(高松地判令和4年8月30日)については、かつて学んだ著明な判例や、様々な法律構成に直面し、日頃憲法論を扱わない参加者にとって良い刺激となった。

第139~141回判例研究会

月1回の判例研究会の第139回は、2024年3月22日開催され、2022年親子法制改正についてe-ラーニングを受講した。嫡出否認等の実務上あまり取り扱わない分野であるが、基本的な民法の改正であるため重要である。

第140回は、2024年4月24日開催され、判例時報2573~2576号から4判例が報告された。
電子記録債権と転付命令に関する最決令和5年3月29日は、転付命令のリスクを思い知る一例であった。その他、破産管財人による不動産の任意売却交渉や、不動産放棄の事前通知と放棄通知が債務の承認にあたるとされた事例(最決令和5年2月1日)、SNS上でイラストレーターのトレース疑惑が発信され、原審で発信者情報開示請求が認められたが高裁で逆転した事例(知財高判令和4年10月19日)、迷惑防止条例の例示列挙型構成要件の解釈に関する事例(最決令和4年12月5日)が紹介され、議論した。

第141回は、2024年5月20日開催され、判例時報2577~2580号から4判例が報告された。
納骨堂の経営等に係る許可の取り消し訴訟において納骨堂の周辺住民の原告適格が認められた事例(最判令和5年5月9日)、統合失調症の治療のため精神科病院に任意入院者として入院した患者が無断離院をして自殺した場合に、病院の無断離院の防止策が十分に講じられていないことを患者に説明すべき義務があったとはいえず病院に責任がないとされた事例(最判令和5年1月27日)、正社員と定年後再雇用有期契約の嘱託社員との間の労働条件格差が不合理といえないとされた事例(最判令和5年7月20日)、婚姻から200日以内に出産したため嫡出推定を受けない子についてDNA鑑定をしたところ父子関係が否定されたにもかかわらず妻から夫に婚姻費用を請求したところ、妻の生活費分は信義則上認められないが養育費相当額は支払うべきとした原審判断が破棄され全額支払不要とされた事例(最決令和5年5月17日)が紹介され、議論した。

第137~138回判例研究会

月1回の判例研究会の第137回は、2024年1月24日開催され、判例時報2564~2568号から4判例が報告された。
窃盗・詐欺により1800万円の損害を与えた18歳の特定少年が逆送された事例(鳥取家決令和4年9月26日)に関し、参加者の取り扱った少年事件の被害金額と処分相場について議論した。その他、法令違反の免振ゴムが用いられたマンションの一室を購入した者が、法令適合性に疑義がないという動機の錯誤を主張したが排斥された事例(東京地判令和4年3月29日)、法改正と経過措置に関する考え方を示した事例(最判令和5年1月30日)、財産分与対象財産に当たる医療法人出資持分について財産分与の判断を保留にした高裁判決が破棄された事例(最判令和4年12月26日)が紹介され、議論した。

第138回は、2024年2月26日開催され、判例時報2569~2572号から4判例が報告された。
被疑者の住所の地番まで報道したことがプライバシー侵害に当たるとされた地裁判決が取り消された事例(東京高判令和3年11月18日)、他人署名・実印冒用を理由として保証否認が認められた事例(大阪高判令和4年6月30日)、警察署に勾留されていた者が脚気に罹患したことで国家賠償法による損害賠償が認められた事例(さいたま地判令和5年6月16日)、養育費減額の審判において、相手方が、相手方の夫の直近の収入資料の提出を拒否した場合に、相手方の夫が精神科の開業医であることに鑑み、少なくとも標準算定表の上限の金額の営業所得を得ていると推認して、養育費を算定した事例(宇都宮家審令和4年5月13日)が紹介され、議論した。

第135~136回判例研究会

月1回の判例研究会の第135回は、2023年11月22日開催され、判例時報2557~2560号から4判例が報告された。
拳銃を強取するつもりで警察官を殺したのか(強盗殺人)、警察官を殺してから拳銃を取る意思が生じたのか(殺人+窃盗)が地裁と高裁で判断の別れた事例(名古屋高判令和4年3月24日)、家賃保証会社の契約書について適格消費者団体が提訴した事例(最判令和4年12月12日)、袋地所有者が行動への通路所有者に対し、通行や工事の妨害禁止を求めて認容された事例(東京地判令和4年3月23日)、転籍出向を前提とする退職の意思表示が心裡留保により無効とされた事例(令和4年1月26日)が紹介され、議論した。

第136回は、2023年12月27日開催され、判例時報2561~2553号から2判例が報告された。
自分の名前をツイッターで検索すると、7年以上前の犯罪報道記事の紹介ツイートが検索結果として出てくるのは、犯罪事実を公表されない法的利益が、ツイートを一般の閲覧に供し続ける理由に優越するので、プライバシー侵害に当たるとして、ツイッター社に削除を命じた事例(最判令和4年6月24日)、固定残業代に関する事例(東京地判令和4年1月18日)が紹介され、議論し、忘年会となった。

第133~134回判例研究会

月1回の判例研究会の第133回は、2023年9月29日開催され、特殊な譲渡所得課税に関するeラーニングを受講した。紛争の相手方と何らかの合意をする場合、その合意が各当事者に如何なる税負担をもたらすかは、事前に依頼者に説明する必要があるため、重要な内容であった。

第134回は、2023年10月30日開催され、判例時報2553~2556号から4判例が報告された。
受刑者の作業報奨金に対する債権差押が認められなかった事例(最三決令和4年8月16日)、離婚後も同居していた元夫婦のうち、親権を有しない親が、親権者に無断で子らを連れて別居したことが不法行為であり、かつ、弁護士が当該連れ去りを肯定する助言をしたことも不法行為とされた事例(東京地判令和4年3月25日)、面会交流について裁判所が綿密に検討した事例(東京高決令和4年8月18日)、原告が警察官に逮捕されている動画を被告がYouTube上にアップロードしたことは公益目的が肯定されず名誉棄損となり、かつ、肖像権侵害にもなるが、白昼路上の出来事の公開なのでプライバシー侵害には当たらないとした事例(東京地裁令和4年10月28日)が紹介され、議論した。