第137~138回判例研究会

月1回の判例研究会の第137回は、2024年1月24日開催され、判例時報2564~2568号から4判例が報告された。
窃盗・詐欺により1800万円の損害を与えた18歳の特定少年が逆送された事例(鳥取家決令和4年9月26日)に関し、参加者の取り扱った少年事件の被害金額と処分相場について議論した。その他、法令違反の免振ゴムが用いられたマンションの一室を購入した者が、法令適合性に疑義がないという動機の錯誤を主張したが排斥された事例(東京地判令和4年3月29日)、法改正と経過措置に関する考え方を示した事例(最判令和5年1月30日)、財産分与対象財産に当たる医療法人出資持分について財産分与の判断を保留にした高裁判決が破棄された事例(最判令和4年12月26日)が紹介され、議論した。

第138回は、2024年2月26日開催され、判例時報2569~2572号から4判例が報告された。
被疑者の住所の地番まで報道したことがプライバシー侵害に当たるとされた地裁判決が取り消された事例(東京高判令和3年11月18日)、他人署名・実印冒用を理由として保証否認が認められた事例(大阪高判令和4年6月30日)、警察署に勾留されていた者が脚気に罹患したことで国家賠償法による損害賠償が認められた事例(さいたま地判令和5年6月16日)、養育費減額の審判において、相手方が、相手方の夫の直近の収入資料の提出を拒否した場合に、相手方の夫が精神科の開業医であることに鑑み、少なくとも標準算定表の上限の金額の営業所得を得ていると推認して、養育費を算定した事例(宇都宮家審令和4年5月13日)が紹介され、議論した。

第135~136回判例研究会

月1回の判例研究会の第135回は、2023年11月22日開催され、判例時報2557~2560号から4判例が報告された。
拳銃を強取するつもりで警察官を殺したのか(強盗殺人)、警察官を殺してから拳銃を取る意思が生じたのか(殺人+窃盗)が地裁と高裁で判断の別れた事例(名古屋高判令和4年3月24日)、家賃保証会社の契約書について適格消費者団体が提訴した事例(最判令和4年12月12日)、袋地所有者が行動への通路所有者に対し、通行や工事の妨害禁止を求めて認容された事例(東京地判令和4年3月23日)、転籍出向を前提とする退職の意思表示が心裡留保により無効とされた事例(令和4年1月26日)が紹介され、議論した。

第136回は、2023年12月27日開催され、判例時報2561~2553号から2判例が報告された。
自分の名前をツイッターで検索すると、7年以上前の犯罪報道記事の紹介ツイートが検索結果として出てくるのは、犯罪事実を公表されない法的利益が、ツイートを一般の閲覧に供し続ける理由に優越するので、プライバシー侵害に当たるとして、ツイッター社に削除を命じた事例(最判令和4年6月24日)、固定残業代に関する事例(東京地判令和4年1月18日)が紹介され、議論し、忘年会となった。

第133~134回判例研究会

月1回の判例研究会の第133回は、2023年9月29日開催され、特殊な譲渡所得課税に関するeラーニングを受講した。紛争の相手方と何らかの合意をする場合、その合意が各当事者に如何なる税負担をもたらすかは、事前に依頼者に説明する必要があるため、重要な内容であった。

第134回は、2023年10月30日開催され、判例時報2553~2556号から4判例が報告された。
受刑者の作業報奨金に対する債権差押が認められなかった事例(最三決令和4年8月16日)、離婚後も同居していた元夫婦のうち、親権を有しない親が、親権者に無断で子らを連れて別居したことが不法行為であり、かつ、弁護士が当該連れ去りを肯定する助言をしたことも不法行為とされた事例(東京地判令和4年3月25日)、面会交流について裁判所が綿密に検討した事例(東京高決令和4年8月18日)、原告が警察官に逮捕されている動画を被告がYouTube上にアップロードしたことは公益目的が肯定されず名誉棄損となり、かつ、肖像権侵害にもなるが、白昼路上の出来事の公開なのでプライバシー侵害には当たらないとした事例(東京地裁令和4年10月28日)が紹介され、議論した。

第131~132回判例研究会

月1回の判例研究会の第131回は、2023年7月25日開催され、判例時報2547~2550号から4判例が報告された。
親子関係不存在請求訴訟は、親又は子が他方を相手取って提起するのが原則であるところ、妻子の無い方の遺産分割に際して、被相続人の兄の子である代襲相続人が、共同相続人である被相続人の弟は実は血の繋がりがなく相続権を有しないことを証するため、親子関係不存在確認請求をすることについて、これをできないとした原審を破棄した事例(最判令和4年6月24日)、パワハラ等を行った消防職員に対する分限免職処分を違法とした原審を破棄した事例(最判令和4年9月13日)、騙取金によって弁済を受けた者は、悪意重過失の場合には被害者に対し不当利得返還義務を負うところ、騙取金の入った預金債権に対し転付命令を得た者も、同様の理解のもと不当利得返還義務を負うとされた東京地判令和4年2月14日、他車運転危険補償特約の射程に関する東京高判令和4年10月13日が紹介され、議論した。

第132回は、2023年8月31日開催され、判例時報2551~2552号から2判例が報告された。
財産開示手続に関する最決令和4年10月6日を題材に、民事執行法の条文処理の再確認を行うとともに、改正された財産開示手続の利用実態について議論した。また、妻が離婚届を書いて夫が預かり、その3日後に夫が役場に提出したところ、提出時には妻が離婚意思を欠いていたので離婚は無効であり、夫は妻の真意を確認することなくその届出をした過失により不法行為が成立するとされた事例(東京地判令和4年3月28日)が紹介され、妻側、夫側の立場から弁護士はどのように支援すべきか議論した。

第129~130回判例研究会

月1回の判例研究会の第129回は、2023年5月31日開催され、判例時報2538~2541号から4判例が報告された。第三者委員会の委員を担当した弁護士の利益相反に関する大阪高決令和3年12月22日、事業者向けファクタリングが実質的に高利息の貸金であるとの主張が否定された東京地判令和3年12月25日、ハンストをしてメディアに紹介されたフランス人男性を被告とする離婚等請求事件の東京家判令和4年7月7日、自衛官の自殺について職場の安全配慮義務違反が認められた熊本地判令和4年1月19日が取り上げられ、議論した。

第130回は、2023年6月27日開催され、判例時報2542~2546号から4判例が報告された。医療過誤があった事案で、医師が死亡診断書の記載を矮小化し、異常市の届出をせず、病院が医療法上の医療事故として取り扱わなかったことが遺族の権利利益を違法に侵害したとはいえないとした大阪地判令和4年4月15日、海外在住の元夫のもとで1年のうち相当期間が看護される約定で離婚したが、元妻が医師の診断書等を根拠に子供が元夫を訪問・滞在するのを阻止したことが違法とされた東京地判令和3年11月30日、国が津波による原子力発電所の事故を防ぐために規制権限を行使しなかったことが違法という主張が排斥された最判令和4年6月17日が取り上げられ、議論した。