月1回の判例研究会の第125回は、2023年1月31日開催され、判例時報2523~2526号から4判例が報告された。
フリーマーケットサイトで他のブランド名をハッシュタグに掲載することが商標権侵害に当たるとされた大阪地判令和3年9月27日に関しては、商標の普通名称化などまで含めて議論された。
性同一性障害特例法2条の定める性同一性障害者には該当するが、3条の定める性別取扱変更審判の要件のうち性別適合手術のみ行っていない元男性が、職場で女性用トイレの使用制限を受けたことが第一審で違法、控訴審で合法とされた東京高判令和3年5月27日に関しては、多目的トイレの活用が現実的ではないかという意見のほか、中小企業における性同一性障害者の取り扱い、トイレに関する労働安全衛生規則の改正などについても議論した。
DV加害者等が被害者の住民票等を取得することを禁ずる内容の、住民基本台帳事務における支援措置の延長申出が、DV加害者に対する不法行為となった名古屋高判令和3年4月22日については、参加者から、全くDVを行っていないと主張する者について支援措置が取られているケースが紹介された。
給与ファクタリング取引が実質的には暴利の金銭消費貸借契約であり、不法原因給付であるとされた東京地判令和3年1月26日に関しては、事業者の売掛金のファクタリング取引が同じ枠組みで制限を受けることがあり得るか等が議論された。
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第123~124回判例研究会
月1回の判例研究会の第123回は、2022年10月28日開催され、判例時報2519~2522号から4判例が報告された。交通事故の物損賠償請求権の消滅時効に関する最判令和3年11月2日、債務の存在を争いつつ行った弁済の受領の催告を有効な弁済提供とした東京地判令和3年8月30日、音楽教室における教師と生徒のJASRAC管理楽曲の演奏が著作権侵害性に関する知財高判令和3年3月18日、親族間の土地使用貸借の終了に関する東京地裁令和2年1月16日が取り上げられ、議論した。
第124回は、2022年11月29日開催され、小規模事業者に対する無料求人広告トラブルに関するeラーニングを受講した。参加者の多くがこの種事案の取扱経験があり、検討を深めた。
第120~122回判例研究会
月1回の判例研究会の第120回は、2022年7月26日開催され、令和3年民法・不動産登記法改正について受講した。登記制度、相続制度が合理化されていくもので、大いに期待したい。
第121回は、2022年8月26日開催され、判例時報2511~2514号から4判例が報告された。会社法の株式買取請求に関する最判令和3年7月5日、担保不動産競売に関する最判令和3年6月21日、不貞行為の認定で参考になる東京地判令和3年1月27日、未成年者の特別代理人が関与した遺産分割に関する東京地裁令和2年12月25日が取り上げられ、議論した。
第122回は、2022年9月27日開催され、判例時報2515~2518号から4判例が報告された。犯罪報道で被疑者の住所の地番まで報道したことが違法なプライバシー侵害であるとした静岡地判令和3年5月7日(ただし控訴審で逆転)、婚姻費用分担において潜在的稼働能力を考慮するかに関する東京高決令和3年4月21日、年金の支給直後に債権差押がなされて取立が終わった後、実質的に差押禁止債権である年金が差し押さえられたものだとして不当利得返還を求めるなどした神戸地裁尼崎支判令和3年8月2日、面会交流に関する大阪高決令和3年8月2日が取り上げられ、議論した。
第118~119回判例研究会
月1回の判例研究会の第118回は、2022年5月30日開催され、判例時報2502~2505号から4判例が報告された。昭和34年に集団予防接種等によってB型肝炎ウイルスに持続感染した者が、昭和62年にHBe抗原陽性慢性肝炎を発症し、平成19年にHBe抗原陰性慢性肝炎を発症した場合の、不法行為の除斥期間の起算点について判断した最判令和3年4月26日が紹介された。継続的不法行為に関する議論と共に、参加者から、当県におけるB型肝炎訴訟の状況が報告された。その他、雇止めに関する東京地判令和2年10月1日、民法1027条(負担付遺贈に係る遺言の取消し)に関する仙台高決令和2年6月11日、なりすまし口コミの削除請求に関する大阪地判令和2年9月18日が紹介された。
第119回は、2022年6月29日開催され、判例時報2506~2509号から4判例が報告された。大規模半壊とする罹災証明書に基づき支援金が支給された後に、自治体の調査により罹災証明書が一部損壊に変更され、支給決定の取消決定が行われた事案で、授益処分の職権取消しの要件が検討された最判令和3年6月4日、懲戒解雇された労働者に対する退職金全額不支給措置が適法とされた東京高判令和3年2月24日、交通事故以外に原因が考えられない一方で、医学的な機序について必ずしも説明が十分とはいえない後遺障害に関して判断された札幌高判令和3年2月2日、破産事件の否認権行使に関する東京地判令和2年1月20日が紹介された。
第116~117回判例研究会
月1回の判例研究会の第116回は、2022年3月30日開催され、判例時報2494~2497号から4判例が報告された。不登校の高校生に対する、校則に基づく生徒指導はいずれも適法とされたが、名列表からの削除や机・椅子の撤去を行い、大阪府教育庁から指導を受けて取りやめるまで継続したのは違法とされた事例(大阪地判令和3年2月16日)、遺言公正証書作成当時の遺言能力が争われ、第一審で中等度以上のアルツハイマー型認知症であったとして遺言無効が認められたが、控訴審では遺言能力がなかったと疑わせるほどの重度のアルツハイマー型認知症であったと認めるには足りないとして、原判決を取り消した事例(広島高判令和2年9月30日)などが紹介された。
第117回は、判例時報2498~2501号から4判例が報告された。税関検査で職員が英語話者の対象者に対し、「sign, sign it, OK?」と述べて、手荷物解体検査の同意書への署名を求めたところ、対象者が「That’s not OK」と拒否したが、職員は、イギリス英語を正確に聞き取れず、語尾のOKのみ理解して口頭の承諾があったと誤解し、結局、令状を取らずに手荷物をバールで破壊したのは違法であったとされた事例(千葉地判令和2年6月19日)、4月13日に遺言書の全文・日付・氏名を自筆し、5月10日に押印した場合、5月10日に遺言書が完成したことになるため、遺言書記載の4月13日は完成日の記載としては誤りとなるとき、遺言全体が無効になると判断した原判決を取り消し、遺言を有効と判断した事例(最判令和3年1月18日)などが紹介された。